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      持続可能な地域交通を考える 2008年 9月号
====================================================== http://sltc.jp/

<目次>

 1. 【報告】前回定例会について
 2. 【報告】当会提出の提案書に、川崎市よりご回答をいただきました
 3. 【書架から】杉田聡『「日本は先進国」のウソ』(平凡社新書)
 4. 【イベント】「横浜カーフリーデー2008」9月23日(火・祝)開催!
 5. 【コラム】「カーフリーデー」にはどんな意味があるの?
 6. 次回定例会のお知らせ

 本メールは Web 上でもご覧いただけます: http://sltc.jp/sltmag/

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◇ 報告:前回定例会について

 8月 9日開催の定例会では、ご参加いただいた皆さんの幅広い関心について
ご紹介いただき、ひとくちに交通問題といっても様々な分野に係わってくる
ことと、幅広い視野に立って総合的な対応が求められることを、改めて実感
する機会になりました。
たとえば今回話題になった「モビリティ・マネジメント」然り、また川崎市
では「放置自転車」ばかりが問題視される半面、徒歩・自転車・公共交通お
よび自動車がどのように総合的な交通体系を築いてゆくべきかといった政策
検討すらされていない実態があるなど、やもすれば現行の交通政策は近視眼
的、場当たり的になっているのではないか、そうした危惧も感じられました。
今後ともそうした問題に取り組むためには、私たちが幅広い視野を持ち総合
的な活動をしてゆく必要性を再確認することができる議論の場になりました。
ありがとうございました。

また、この他に次の議題について議論し、決定しましたのでご報告します。

●市バスの燃料費について
 ・川崎市バスの燃料費について、今にも路線バス事業が行き詰まるかのような
  錯覚を与える新聞記事が出ていたが、数値を拾って計算してみたら市バスの
  経費全体に占める燃料費の割合は 5% 足らず(平成20年度予算)。ここで
  燃料費が3割増になったとしても、営業費用を 1.2% 押し上げるにすぎず、
  仮に運賃に転嫁したとしても 2.5円の値上げにしかならない。
 ・一方、市バスの利用者増が続いているようだが、仮に今年も昨年同様 2.4%
  の増加傾向が続くとすると、営業収入を 1.9% 押し上げる効果がある。
 ・つまり、燃料費上昇は市バスにとって増収を期待できる好機であり、
  むしろこの機会を積極的に活用し、広報活動などに取り組んでもらいたい。

●横浜カーフリーデー (YCFD) への参加登録
 (参加理由の説明)
  自動車がもたらす環境問題、都市交通問題を改善する目的で、クルマに頼ら
  ないまちづくりを呼びかける啓発的なイベントだ。横浜市では活発に取り組
  まれており、今年で 5回目の開催となる。今回はご縁があり、運営委員会よ
  りお声がけいただいた。
  川崎市のお隣であり、また本会が掲げる主旨と共通する理念をもって継続的
  に活動されている方々でもある。もちろん、川崎市に基盤がある当会として
  は、今回勉強させていただきながら、今後は川崎市内の活動にも活かしてゆ
  ければと思う。
  なお、今年について当会で具体的な出展等を行うことは日程的にも厳しく、
  今年は特に出展などは考えていないが、チラシ等に名前が載り本会の活動実
  績になることはもちろん、他の市民活動団体と交流をする機会が得られるし、
  我々の勉強もかねて参加できたら良いと考えている。
  参加条件は、主旨に賛同し、参加年会費 3,000円を支払うこと。それ以外の
  義務は生じないようだ。日程的な問題から、今日の定例会までに決めたい。
 (会員の意見)
 ・本日欠席の会員より、今回は見合わせたらとの提案をいただいている。
  理由としては、今から参加しても今年はもう何もできないので、来年からで
  いいのではとのことだ。
  >これについて担当者の意見は、先日の運営委員会に参加させていただき、
   とても活気を感じられた。出展等はできなくても交流や勉強の機会が得ら
   れるだけでも価値があると思っている。また、まだ駆け出しの本会にとっ
   ては広報的価値もあるだろう。そうした意義に対し、会費3,000円は充分
   負担可能な額だと思った。
 ・参加するのは良いと思うが、本会の会費制度が充分整備されていない問題も
  ある。発生する費用はどこから支払うか。
  >ひとまず担当者が立て替えておき、会費については事後、会から負担する
   形にしたらどうか。金額的にも立て替えに問題はない。
 (結論)
 ・YCFDの主旨に賛同し、参加費を負担することに異論はないようだし、展示等
  ができなくとも参加することに意義があるとの考えから、参加することで合
  意した。その後の経緯は担当者から随時メール等で報告することとした。

●「高津区市民活動見本市2008」への出展準備
 (説明)
 ・7月30日の説明会に参加してきた。本会はブース出展とポスター展示で申し込
  んでいる。ポスター展示は模造紙1枚相当のものを用意すれば、ロビーあたり
  に張り出してもらえる。ブース出展はホールで行われ、幅90cm×高さ180cmの
  パネルを 1〜4枚借りられるので、掲示をし、説明員を立てることになる。
  なお常設の机・イスは使えないようで、電源が使えるかは主催者側で確認中。
  具体的な日程は配付資料を参照してほしいが、次回定例会までには出展内容
  を確定し、ポスター・チラシの制作に取りかかる必要がある。今回は出展内
  容をご提案いただきたい。なお今まで挙がっているのは次のとおりだ。
   ○身近な交通相談
   ○アンケート
   ○ポスター「ガソリンの値上がりは恐くない!〜クルマとかしこく付き
    合う方法〜」(仮)の掲示
   ○クルマと環境、交通権などの啓発チラシの制作・配布
 (意見)
 ・「ガソリンの値上がりは恐くない」という展示は、意外感からも関心を集め
  そうだ。
 ・高津区の交通の現状を問題別に地図に表現してはどうか。

●神奈川県の地球温暖化対策
 時間切れのため次回以降に持ち越しとなりました。

●大店立地法と買物客用駐車場について(大規模小売店舗の交通環境影響)
 担当者より、大規模小売店舗立地法の主旨と、溝口駅前商店街で同法に基づいて
 行われた説明会に参加した際の報告が行われました。詳しくは添付資料『大規模
 小売店舗の交通環境影響』にあるとおりです。地域の生活環境をまもるためにあ
 るはずの同法に基づく指導により、結果として大規模商業施設の駐車場を拡大し
 「マイカー」で訪れる買物客を増加させてしまう状況についての問題意識を共有
 するとともに、今後も引き続き取り組んでゆくことになりました。

●その他の広報活動、検討・報告事項
 Google OneGreen への登録、かながわ県民活動センター利用登録についての報告
 がありました。また、MAKE the RULE への賛同団体登録について検討をすすめる
 ことで合意しました(本件は担当者の都合等を考慮して随時進めるため、今後の
 対応は一任されました)。
 また、今後は県温暖化対策条例や市バス経営問題検討会最終答申へのパブリック
 ・コメント提出、大店立地法に基づく意見提出などの予定を検討しています。
 加えて、ホームページの内容充実や担当者の負担軽減のため、これまで募集して
 いた写真に加え、コラム記事や書評などを募集することになりました。

●次回の定例会開催日程について
 →次回は 9月11日(木) 18時半から、高津区役所4階「市民活動支援ルーム」
  (今回と同じ会場)で開催することとしました。

<次回持越>
今日予定していた下記議題については次回以降に持ち越しとなりました。
・神奈川県地球温暖化対策推進条例(仮称)について
 (深夜営業と来客の交通手段、大店立地法などを含む)
・自転車に関する事例紹介
・「基本的な考え方」について
・会員制度と会計について
・ 「持続可能な地域交通」とは?

<まとめ>
今回は川崎市バスから川崎市の交通計画まで、地域的な問題が幅広く議論され、
川崎市内の交通分野における問題点が浮き彫りになってきたように感じました。
また、高津区市民活動見本市や横浜カーフリーデーなどに参加することで、当会
の活動について理解を広めるとともに、地域毎・分野毎で活動する他の市民団体
と連携する機会が得られるとの期待が高まります。もっとも、出展にかかる準備
や広報資料作成などで作業が発生し、具体的な検討・作業をこれから進めてゆく
必要があります。今後とも忙しくなりそうです。
半面、今回は盛りだくさんの内容になってしまい、議論できない議題が続出する、
資料が混乱するなど、運営側の不手際が目立つ結果となってしまいました。
今後は運営側の体制の見直しと拡充、配付資料の簡略化や議題の絞り込み、会員
同士の協力体制などによる作業の平準化、より多くのみなさんに参加していただ
きやすい雰囲気づくりなどに一層努めてゆきたいと思います。


なお、前回定例会での配付資料は下記のところでご覧いただけます。

<配付資料>
・配付資料:議題等
 →http://sltc.jp/file/meeting/2008/08/20080809.pdf (1732KB)
・添付資料1:川崎市バスの燃料費試算
 →http://sltc.jp/file/meeting/2008/08/01_kawasakibus_nenyu.pdf (319KB)
・交通局ニュース No.8 平成20年6月発行
 →http://www.city.kawasaki.jp/82/82syomu/home/news/index.htm
・添付資料2:市バスの経営戦略と川崎市の交通政策に関する提案書
 →http://sltc.jp/file/2008/200807kawasakibus.pdf (2.9MB)
・川崎市および「川崎市バス事業経営問題検討会」への提案書提出について(報道発表)
 →http://sltc.jp/file/2008/200807kawasakibus_pr.pdf (121KB)
・神奈川県地球温暖化対策推進条例(仮称)のあり方について(最終案)
 
→http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kankyokeikaku/ondanka/jourei/iinkaian01.pdf
 
→http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/kankyokeikaku/ondanka/jourei/iinkaian02.pdf
・『神奈川県地球温暖化対策推進条例』(仮称)の概要(前回と同じ)
 →http://sltc.jp/file/meeting/2008/07/20080710_ondanka.pdf
・大規模小売店舗の交通環境影響
 →http://sltc.jp/file/meeting/2008/08/02_daiten.pdf (804KB)
・大規模小売店舗立地法に基づき会員が提出した意見
 →http://www.city.kawasaki.jp/28/28syogyo/home/rit/20koukoku/iken2001.pdf
・大規模小売店舗立地法について(川崎市資料)
 →http://www.city.kawasaki.jp/28/28syogyo/home/rit/aramashi.htm
・同法に基づく「島崎ビル」(長崎屋 ドン・キホーテ溝の口駅前店)の届出内容
 →http://www.city.kawasaki.jp/28/28syogyo/home/rit/20koukoku/20006.pdf
・MAKE the RULE キャンペーン 賛同のお願い・実施体制
 →http://www.maketherule.jp/dr5/


<紹介資料>
・第3回「人と環境にやさしい交通をめざす全国大会」in横浜
→http://ycfd.org/modules/ycfd2/index.php?id=9

(1)県温対条例、深夜営業、コンビニ・外食産業、大規模小売店舗関連
・フードビジネス「24時間・深夜営業 短縮機運」(日経MJ 2008年06月20日15面)
・マーケティングの非・常識「規制範囲 広がる可能性」(日経MJ 2008年07月18日 4面)
・「1000人の家計簿 サマータイム」(日経MJ 2008年07月16日 2面)
・「底流を読む 「資源多消費型」は淘汰へ」(日経MJ 2008年07月28日 3面)
・「ガソリン高の逆風やまず 外食、戦略転換 急務に」(日経MJ 2008年07月18日19面)
・日本の小売業「進む環境対策」(日経MJ 2008年06月25日 5面)
・FB online 連載コラム「佐藤了の妄想セカイはめくるめく!?」
・「深夜営業規制に反発 「コンビニだけ不公平」」(日経MJ 2008年06月23日 4面)
・私もひと言「コンビニの24時間営業」(日本経済新聞夕刊 2008年07月26日 9面)
・日経グローカル No.101 2008年06月02日 p.12-13
 「低炭素社会にらんだ中長期戦略」「交通を含めた政策の統合化がカギ」
 「堺市、LRTで東西結び公共交通の利便向上」「実行計画達成は2割強にとどまる」
 「自治体での地域推進計画での取り組み項目」「自治体別の実行計画進ちょく状況」
(2)自転車の活用、燃料費変動の影響
・「電動アシストサイクル貸し出し 箱根の渋滞緩和効果検証 きょうから5カ所で50台」
 (毎日新聞 2008年07月24日24面)
・「自転車3人乗り解禁へ」(交通新聞 2008年08月04日 4面)
・「自転車 都心で 観光地で 脚光」(日本経済新聞夕刊 2008年07月26日 1面)
・「通勤、通学、街歩きに 広がるレンタサイクル」(神奈川新聞 2008年08月05日)
・「自然感じ快走 箱根 電動自転車貸し出し 便利と好評 運用に課題も」
 (神奈川新聞 2008年08月03日20面)
・「トラック運賃 進まぬ燃料高転嫁」(日本経済新聞 2008年07月18日 2面)
・「ガソリン高騰 じわり車離れ」(日本経済新聞 2008年07月18日 3面)
・墨滴(交通新聞 2008年07月26日 1面)
・「燃料価格上昇で減少の交通事故死、今年は3分の1に? 米国」
 (CNN.co.jp 2008年07月12日)
・「夏の行楽 車は減り鉄道が増加」(NHK 2008年08月03日)
・「ガソリン値上げで自動車利用減 小型車人気高く」(中国情報局、2008年06月23日)
・「ガソリン値上げ:「マイカー利用を控える」75%」(中国情報局、2008年07月11日)
・「財界 温暖化負担を警戒 「犯人は本当にCO2なのか」」
 「日本の所得流出額 原油高で17兆円増」(東京新聞 2008年07月27日 3面)
・「環境保全を通じた持続的で魅力ある観光」(交通新聞 2008年08月07日 2面)
(3)公共交通利用とまちづくり
・「なぜ?利用少ない歩道橋 岡山中央郵便局前 幅8メートル市道に全長50メートル」
 (読売新聞岡山版 2008年05月09日)
・「市内初のコミュニティーバス 団地の足「みらい」出発」
 (東京新聞川崎版 2008年07月22日22面)
・「神奈川・秦野市 公共タクシー 運行実験」(日経MJ 2008年07月07日13面)
・若い世代「バス待ち順番 老人も守って」(朝日新聞 2008年07月20日 6面 投書欄)
・「電車内の携帯電話控えて」「悪いマナーが喫煙規制に」(神奈川新聞 2008年08月08日)
・「わき出す地域パワー 欧米都市に学ぶ 1 米ポートランド(上) 「人→街→商い」の
 好循環」(日経MJ 2008年07月21日10面)
・「わき出す地域パワー 欧米都市に学ぶ 2 米ポートランド(下) 「地産地消」で
 循環型経済」(日経MJ 2008年07月28日13面)
・補助線「くいだおれ閉店を読み解く 都市の「限界繁華街」化」
 (朝日新聞 2008年07月20日 5面)


次回定例会は 9月11日(木) 18:30 より、高津区役所4階「市民活動支援ルーム」
で開催予定です。詳しくは本メール後段でご案内していますが、市民活動見本市
への参加など、みなさんのお力で成功させたいと思います。ご参加をお願いいた
します。

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◇ 報告:当会提出の提案書に、川崎市よりご回答をいただきました

メールマガジン前号でご報告した提案書に対し、川崎市交通局および関連す
る部課よりご回答をいただきました。
川崎市からのご回答→ http://sltc.jp/file/2008/08/312.pdf (115KB)

お忙しいところにもかかわらずご対応いただいた担当の皆様にはまず御礼を
申し上げるとともに、いただいた回答内容については今月の定例会(後述)
で検討する予定です。定例会には一般の方もご参加いただけますので、川崎
市民の足を支える路線バスに関心がある方はぜひこの機会にご参加ください。

また、本提案書は「川崎市バス事業経営問題検討会」にも提出しているとと
もに、公開で実施された検討会には当会の担当者が毎回傍聴に伺っておりま
したが、委員の皆さんには市民の足である路線バスの公共性の高さに格段の
ご配慮をいただきながらご審議いただいておりました。答申においても、た
とえば路線バスの利便性を向上させることや、「マイカー」(注:最終答申
では「私的交通手段」との表記に変えられています)から公共交通への転換
をすすめること、広く公共交通機関に働きかけた上で「総合交通政策」を早
急に取りまとめることなどが提起されています。

そうした事も踏まえ、第7回(最終)検討会においてお礼状を提出してまいり
ましたことを併せてご報告いたします。
報道発表 PDF→ http://sltc.jp/file/2008/20080826_pr.pdf (298KB)
なお、礼状の内容は日程的な都合からメール等で協議した上で決定しました。

また、提案書本文は既報(メールマガジン前号を参照)のとおり、引き続き
下記の場所に掲載しております。

『市バスと市政が連携し、持続可能な地域交通の利用推進を!
 ― 市バスの経営戦略と川崎市の交通政策に関する提案書 ―』
(本文HTML)http://sltc.jp/file/2008/200807kawasakibus.html
(本文 PDF)http://sltc.jp/file/2008/200807kawasakibus.pdf
(報道発表)http://sltc.jp/file/2008/200807kawasakibus_pr.pdf

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◇ 書架から:杉田聡『「日本は先進国」のウソ』(平凡社新書)

著者は、帯広畜産大学教授(哲学)で、自動車論、民主主義論、セクシュアリティ
論などを研究している方です(著者プロフィールより)。第1章から6章にわたり、
環境、労働、男女平等、教育、政治の各分野で、その実態と問題点を具体的に指
摘したうえで、「本当に日本は“先進国”と言えるのか」との問題提起をされて
います。私自身、いろいろダメなところはあっても、日本が“先進国”であると
いうこと自体に疑問を感じたことはなかったため、改めて問われてはっとしまし
た。

環境問題に関連しても、疑うというより、思いもしなかった状況を教えられまし
た。今日最も緊急な課題とされている温暖化問題についても、私は、問題の個人
的主要因は「エアコンの使い過ぎ」「レジ袋や紙類の無駄遣い」等かなと漠然と
考えていたところがあります。著者の杉田さんは、地球温暖化問題解決には「車
使用の削減が決定的に重要」と考えており、その根拠を精密な計算で示していま
す。SLTcに参加するようになって、私もようやく自動車問題の深刻さを認識する
ようになりましたが、それでも「温暖化と自動車」というのはそこまで強く結び
付けて考えたことはありませんでしたので、正直驚きました。本書では、例えば、
環境問題啓発の功績でノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア元アメリカ副大統領
の著作『不都合な真実』で、地球温暖化防止のための行動として提案された10項
目のうち、自動車関連としては「エンジンを切る」「タイヤをチェックする」の
2点のみであることが指摘されています。
ゴア氏とノーベル賞を同時受賞したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が、
温暖化防止のために「道路輸送から、鉄道および公共輸送システム・非自動車交
通(自転車利用・徒歩)へのモーダルシフト」を掲げていることが本書で対比さ
れ、それによってゴア氏の訴えの不十分さが際立ってよくわかります。一般に
『不都合な真実』は良書としてばかり宣伝されていますが、書かれていないこと
を知ることで、より深刻な問題について考えるきっかけになりました。

また、日本政府のデータの分析も興味深いものでした。例えば、政府の提案では
「通勤にバス・鉄道・自転車を使用すると、一人、一日当たり、180グラムのCO2
が削減できる」ことになっているそうです(「私のチャレンジ宣言」)。この量
を、環境によいと宣伝されている車プリウスのCO2排出量(1キロ当たり65グラム)
で割ると、職場まで片道1・4キロしかないことになるということが示されます。
1・4キロというと、歩いても25分位のところに職場があることになります。著者
は、こうした計算により、政府が主張する「公共交通や自転車使用で削減できる
CO2量180グラム」という数字が、現実的なものなのか、実は自動車による環境へ
の負荷を過少に見せるため出された数字ではないのかと疑問を呈します。

以上はほんのわずかな例ですが、ゴア氏の著作にしても、政府の数字にしても、
自分がいかにイメージで物事をとらえていたかがよくわかりました。骨が折れる
ことですが、一つ一つの物事について、批判的・科学的に見ていく必要性を痛感
しています。
その意味で、杉田さんのこの著作自体、盲信するのではなく、『不都合な真実』
全体を読んでゴア氏の主張を確認したり、政府の数字の根拠を調べてみたり(実
は深い意味があって、180グラムが出てきたのかもしれない?)する等して、自分
で検証してみることが必要なのでしょう。杉田さんご自身が、そうした姿勢を重
視されている方だと思います。本書の他の分野については、日本がとても情けな
い状況にあることに、いちいち肯かされることが多かったです。それらは検証が
いらないほど(?)日々身にしみて感じていることばかりでした。しかし、なぜ
そこまで日本が劣化してしまったのか、その原因を知るためには、やはり批判的・
科学的に諸資料を検討していく必要があるのだと思います。そうした示唆に富ん
だ著作でした。

(担当:堀添)
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  杉田聡『「日本は先進国」のウソ』
  (平凡社新書 424、2008年6月、ISBN 978-4-582-85424-4)
  http://www.heibonsha.co.jp/catalogue/exec/browse.cgi?code=85_424

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◇ イベント:「横浜カーフリーデー2008」9月23日(火・祝)開催!

 9月23日(火・祝)、「横浜カーフリーデー2008」が開催されます。 

当日は「かえっこバザール」やセグウェイの試乗会、各種ステージ、地元産
野菜やビールの直売など、皆さんに楽しんでいただけるイベントが盛りだく
さんです。また環境にやさしい交通・生活に関する展示や、「世界道路交通
犠牲者の日」にちなむキャンドルナイトなども行われます。

詳しくは公式ホームページ http://ycfd.org/ をご覧ください。当日はぜひ
公共交通でお出かけいただき、この機会に、クルマがなく人にやさしいまち
の快適さ・楽しさを体験してください!

日時:2008年 9月23日(火・祝) 11〜16時 (キャンドルナイトは18〜20時)
場所:日本大通り・横浜公園
    →みなとみらい線「日本大通り」駅2番出口、根岸線「関内」駅南口
   イセザキモール6丁目
    →京急線「黄金町」駅、横浜市営地下鉄「阪東橋」駅

・なお、東急・京急・首都圏のJR沿線からお来しいただく場合、および市営
 地下鉄・バスをご利用の場合は割安なきっぷを利用できる場合があります。
 詳しくは本会ホームページよりリンクを辿って各社の案内をご覧ください。

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◇ コラム:「カーフリーデー」にはどんな意味があるの?

横浜カーフリーデーをご紹介しましたが、「カーフリーデー」とは何ぞや?と
思われる方もおられるでしょうか。
本メルマガ6月号(※1)でも少し触れましたが、カーフリーデーとは、自動車が
もたらす大気汚染や騒音などの公害、気候変動(地球温暖化)、渋滞などの環
境・都市交通問題を改善するきっかけをつくるため、市民のみなさんにクルマ
のない(クルマが適切に管理された)都市空間の快適さを体験してもらうこと、
中心市街地へ「マイカー」で出かける習慣を改めてもらうきっかけにすること、
および「マイカー」の利用が制限されても都市の諸活動に支障を来たさないこ
とを確認することを目的にしたイベントです。

ヨーロッパモビリティウィーク&カーフリーデーには、昨年は世界で2000以上
の都市が参加しており、横浜でもその参加都市として開催されます。もちろん
当会もその主旨に賛同して参加しています。ちなみに横浜市では市民が主役と
なって開催されており、今年で 5回目の開催になります。


ところで、1960年代の欧州諸国では、増え続けるクルマをただひたすら捌くこ
とを目的とする道路の拡幅や増設に多額の投資が続けられてきました。
その結果、大気汚染、騒音、道路混雑、非効率な土地利用、交通事故などの様々
な弊害をもたらし、しかも都市空間は拡幅された自動車道路でズタズタに切り
刻まれ、歩行者や都市のコミュニティは破壊されてしまいます。つまり、一見
便利なように見える「マイカー」も大勢が使いはじめると様々な大きな弊害を
もたらし、そのツケは都市の住民自身に跳ね返ってきたのです。

こうした事態を経験した1970年代以降、「マイカー」は最善の選択でないこと
に気づいたドイツや北欧諸国の一部都市を皮切りに、短距離移動都市という概
念による都市計画が進められました。まちの中心部では歩行空間や公共交通を
充実させるとともに、自転車道のネットワーク化をすすめ、中心市街地にクル
マを乗り入れさせず、人にやさしいまちづくりをすすめたのです。その結果、
商業が活性化し、渋滞の緩和や優秀な人材が集まることなどにより企業も発展、
まちの価値が向上したことから、周辺の都市へも拡大していったそうです。

まちづくり・都市計画では、私的利益ではなく公益的な立場から中長期的な視
野に立って考え行動することが求められます。と同時に、日々の交通は私たち
ひとりひとりの判断で行われるものですから、都市に住む(または都市に来る)
ひとりひとりが関心を持って参加するような取り組みも必要です。その両方の
意味で、モビリティウィーク&カーフリーデーは効果を挙げるように計画され
ているのです。
毎年の開催にあたり、行政など都市計画に係わる人たちには、マイカーではな
く環境にやさしい交通への転換を促すための恒久的な施策を毎年ひとつ以上ず
つ実施します。と同時に、都市に住む皆さんには、カーフリーデーでクルマの
ない都市空間の安全・快適さを実感してもらい、関心を持っていただくきっか
けにしているというわけです。

欧州でこうした活動が始まり、積極的に取り組まれているのは、裏を返せば、
それだけ「クルマ社会」がもたらす弊害が大きく、その解決が難しいことを示
唆しているとも言えます。その様子は、典型的な「クルマ社会」である米国で
何が起きているかを分析すると、よりはっきり見えてきそうです。


前号の本コラム(※1)では、「クルマ社会」の問題点を具体的に浮き彫りにした
原典ともいえる湯川利和氏の著書『マイカー亡国論』(1968年)をご紹介しま
したが、氏は本書で米国における都市の諸問題を緻密に分析した上で、「モー
タリゼーション」が叫ばれ始めた1960年代当時の日本国民に対し警鐘を鳴らし
ていました。
この問題は古くて新しい問題で、米国でもこれまでの安すぎた燃油価格の調整
が始まったことを受けてようやく自転車や公共交通の見直し機運が高まってい
ると報じられています(メルマガ7月号のコラムを参照)が、そうした「移動の
自由」の確保という問題に加え、都市機能やコミュニティの破壊などの面にお
いても「モータリゼーション」は国民生活を破壊しているようです。

邦訳版が発表されたばかりの Jane Jacobs著『壊れゆくアメリカ』(原著は
2004年)の pp.48-「かくも罪深きモータリゼーション」では、「アメリカの
地域社会を破壊する主な原因は〜自動車だった」という書き出しで始まり、
かつて安全・快適かつ廉価な市民の足であった市街電車(路面電車、LRT)が
活用されていた頃には存在したコミュニティが「モータリゼーション」によっ
て抹殺されたことと、その結果として社会の矛盾を拡大させている様子を浮き
彫りに指摘していますが、こうした状況は、今から40年も前に著された『マイ
カー亡国論』で、子細に分析されているのです。この問題は、まさに米国で、
そして日本でも現実となり、私たちの社会の重荷になっています。

ご存じのように、残念ながら湯川氏の懸念は的中してしまい、「モータリゼー
ション」が進められて以降の日本でも、米国の事例を後追いするかのように、
公共交通網が衰退するとともに、中心市街地や商店街などのコミュニティ機能
もまた衰退してゆきました。それに「高齢化社会」が加わり、高齢者や子供な
どのクルマを利用できない(または選択的にしていない)人々に「移動の自由」
を保障できない状況が拡大しつつあります。対策としては自治体や市民団体な
どの努力によりコミュニティ交通が提供されるなどの努力がされている様子は
よく報じられますが、残念ながら、元凶である「マイカー」に対しては抑制ど
ころか未だに自動車道路が拡張され続けるなど促進策が取られているのが実情
で(※2)、原因を放置したまま対症療法に奔走しているような状況です。


かたや、カーフリーデー発祥の地である欧州では、公共交通網を充実させると
ともに、たとえば自動車道路を狭める、曲げる(市街地の道路を速度を上げに
くい構造にする)、あるいは渋滞税を課す、そもそも中心市街地に進入できる
車両は公共車両のみに制限するといった様々な工夫を併用し、クルマに頼らず
持続可能な地域交通への転換をすすめる取り組みが行われています。そのよう
に取り組み事例は様々あれど、いずれの場合も人と環境にとってやさしく安全・
安心かつ便利な交通手段を提供するとともに、人にやさしい都市空間を確保し、
結果として中心市街地における商業の活性化、快適なまちに人が集まることに
よる都市の魅力向上、市民とそのコミュニティ、経済活動の活性化に資すると
いう効果を生んでいるのです。

近年、こうした事例を参考に、中国、台湾、韓国、モンゴルなどの近隣諸国に
おいても取り組みがすすめられています。これら諸国ではクルマがもたらす環
境問題や事故・渋滞の抑制、および交通権の確保(多くの市民に安全・安心・
便利な交通の利用可能性を提供すること)を主目的にしているようですが、こ
の取り組みが続けられるうちに、まちの魅力向上にも資することでしょう。


日本においては、7月号の本コラム(※)でご紹介したように、首都圏をはじめ
とする大都市では今も自転車や公共交通が高度に利用されていますが、日本の
1960年代は地方都市においても高度な公共交通サービスが提供されており、賑
わう中心市街地が形成されていました。これらは「モータリゼーション」後の
世界(=これからの私たち)が理想とするまちづくりが既に実現していたとも
考えられるでしょう(湯川 1968、第6章「マイカー地獄からの脱出」)。実際、
今でも大都市圏ではクルマの利用を抑えながら、多くの人に移動の機会を低廉
に提供する公共交通網が整備されていますが、このような「クルマに頼らない
社会の強さ」がかつては多くの都市で実現されていたのです。

しかし、私たち日本人はその理想郷を自ら破壊してきました。今では大都市圏
ですら近郊に行くと公共交通サービスの低下とスプロール化(都市機能の無秩
序な拡散)が方々で起きていますし、過疎地と呼ばれる地域はおろか、今では
地方都市でさえも公共交通の衰退が顕在化しています。欧米諸国で起きている
事例から学べば、日本でも「クルマ社会」の在り方を問い直す必要に迫られて
いることは明らかです。

日本でこれまで政策的に進められてきた「モータリゼーション」は、少なくと
も都市部の「マイカー」利用を野放図に拡大させた点においては明らかに失策
であったと言えます。そうした失策に依る生活習慣が定着してしまった方々に
は、今までの生活習慣を改めてもらうきっかけをつくる必要もあるでしょう。

日本でも、「カーフリーデー」を積極的に活用してゆく必要がありそうです。

(担当:井坂)
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※1 過去のメールマガジンはこちらでご覧いただけます→ http://sltc.jp/sltmag/

※2 本年 4月20日にクルマ社会を問い直す会、エコ・クリエーターズ・クラブ
  および当会の 3団体で共同作成・提出した下記の意見書を参照。
  『自動車への環境税・渋滞税導入でクルマ以外の移動手段推進を!
   ― 自動車関連税制をはじめとする交通政策に関する意見書 ―』
  (本文HTML)http://sltc.jp/file/2008/200804iken.html
  (本文 PDF)http://sltc.jp/file/2008/200804iken.pdf

<参考文献>
・カーフリーデージャパン編『カーフリーデーアジア会議 in YOKOHAMA』、
 カーフリーデージャパン、2008年。(非流通書籍です。発行元
 http://cfdjapan.org/ または神奈川県立図書館に所蔵をご確認ください。)
・湯川利和『マイカー亡国論』、三一書房、1968年。(絶版となっています。
 神奈川県立図書館が所蔵していますので県内の公共図書館にご照会ください。)
・Jane Jacobs著・中谷和男訳『壊れゆくアメリカ』、日経BP社、2008年、
 ISBN 4-8222-4668-6、原著は "Dark Age Ahead", 2004年。
・三浦展編著『脱ファスト風土宣言―商店街を救え!』、洋泉社、2006年、
 ISBN 4-86248-020-9、第1章「日本の商店街は世界のお手本」(服部圭郎)。

・ヨーロッパモビリティウィーク&カーフリーデー
  http://www.mobilityweek-europe.org/ (英語)
・カーフリーデージャパン http://cfdjapan.org/
・横浜カーフリーデー http://ycfd.org/

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◇ 次回定例会のお知らせ

日時:2008年 9月11日(木) 18:30 〜 21:00 (18:15頃開場)
場所:高津区役所(高津区総合庁舎)4階「市民活動支援ルーム」会議室
   (エレベータを降りて右手、または階段を昇って左手すぐです。)
交通:
  駅からの地図 → http://sltc.jp/meeting.html
 JR南武線武蔵溝ノ口駅・東急田園都市線溝の口駅南口下車、徒歩数分。
 川崎市バス溝15〜19系統「高津区役所前」下車、徒歩数分。
 川崎市バス・東急バス溝21〜25系統「溝口駅南口」下車、徒歩数分。
 川崎市バス・東急バス各系統「溝口駅前」「溝の口駅」下車、徒歩約5分。
 JR新横浜駅北口より東急バス直行「溝の口駅」行きで約30分、終点下車。

 ○お来しの際は徒歩・自転車・電車・バスをご利用ください。
 ○自転車でお来しの方は区役所正面入口前の駐輪場をご利用ください。
 ○本会会員はもちろん、本会の活動に興味のある方ならご参加いただけます。
  参加自由・無料です。お誘い合わせの上、皆様のお来しをお待ちしています。


<議題予定>

 ■『市バスの経営戦略と川崎市の交通政策に関する提案書』に対する
  川崎市からの回答について(報告・検討)
 ■「高津区市民活動見本市2008」への出展準備(出展内容の確定と準備)
 ■その他のイベント開催・出展について
 □「神奈川県地球温暖化対策推進条例(仮称)」と、深夜営業店への来客の
  交通手段について(大店立地法と買物客用駐車場との関連も含めて)
  参考:メールマガジン7月号→ http://sltc.jp/sltmag/
 □「基本的な考え方」改訂案
 □「持続可能な地域交通」とは?
 □会計
 ■活動報告・意見交換

 ※この他にも議題にしたい事などありましたら本会宛ご提案ください。

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   ご意見・ご希望などは http://sltc.jp/query よりお寄せください。
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■■ 編集・発行:持続可能な地域交通を考える会 http://sltc.jp/
■■ 2008年 9月 7日発行(担当:井坂)
■■
   (c) 2008 Sustainable Local Transit committee, Kawasaki Japan.
   Some rights reserved; Attribution-No Derivative Works 2.1 Japan.
    http://creativecommons.org/licenses/by-nd/2.1/jp/
   各記事の著作権は各執筆者に(特記無い記事は当会に)帰属します。
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